Mezumona Kosaki pages.
リサイクルショップに自分は立ち寄った。 いつも通るこの道の途中にそのリサイクルショップはあった。
改めて店先を見てみると、お店の中には新しいものから年季の入ったもまでたくさん置かれていた。 たくさんの CD やゲーム機、高級そうな大きいスピーカー、 店の奥にもまだ新しい持ち主を待っている物々があるだろう。
いつもは通り過ぎるこのお店だが、今日は入ることにした。 今日は目的があったからだ。
壁掛け時計が壊れてしまったのだ。ただでさえ、お金が無いのに……。 でも、リサイクルショップなら壁掛け時計の一つや二つはおいてあるだろうと考えた。 それも中古品なら手軽に買える値段で置いてあるだろうと思った。
ガラスのドアを開けて自分はリサイクルショップに入った。 ぱっと見た感じでは、入った所には腕時計はあるものの壁掛け時計はなかった。 ほしいゲーム機とかも並んでいて目移りしそうだが、今回は心を鬼にして見なかったことにした。
店の奥の奥に入り込むと、壁掛け時計がずらりとぶら下がっていた。 新しいものから年季の入ったものまで並んでいて、それぞれの下に値札がくっついていた。 この中からお手軽で綺麗なものを見つければ、即決だ。
とりあえず安いものは無いかを一つずつ値札を見ては次の時計の値札を流し読みしていった。 うーん。これは安いけど見た目が微妙。こっちは新品同様のスタイリッシュなものだが値段が高い。 なかなか良いものは見つからない。
そして最後の一個、自分は値札を見ようとしたが、それよりも時計本体に興味がそそられた。
それは、木で作られた古めかしい鳩時計だった。 少しホコリは被っていたが、その重厚でアンティークな雰囲気はむしろかっこよく見えた。 目線を値札に移した。売れ残りなのか、手頃な値段だった。 何より、ちょっとした運命的なものを感じた。
自分はその鳩時計を買うことにした。 レジに持っていくと、店員さんは手早く梱包し会計も済ませてくれた。 接客も良かったしまた来てもいいかな。
自分はその鳩時計を持って家に帰って早速壁掛け時計の時刻合わせを始めた。 この手の時計は分針を時計回りに回して時刻を合わせるらしい。
今の時刻は腕時計によれば、そろそろ正午になるらしい。 前の壁掛け時計は少し早めの時刻を示すようにしていたので、 この鳩時計も少し早めだが十二時にあわせることにした。
自分はゆっくりと分針を時計まわりに回し始めた。 幸いにも鳩時計は十一時十五分を指していたので、ちょっと回すだけで済みそうだ。
そして鳩時計が十二時を指した時、鳩のからくりが出てきた。 あたりを光で包みながら。そして、意識が遠のいていきながら。
気づいた時には鳩時計を持ったまま草原に横たわっていた。 まだぼやっとした意識の中、とりあえず半身を起こした。
ここはどこだろうか。自分はあたりを見渡した。 景色を見て記憶を辿るが、たぶんここは知らない場所だ。
とりあえず、立つか。 そうして土埃をはたきながら立ち上がった時、 後ろからかわいらしい声で話しかけられた。
「ようこそちくたくの世界へ!あなたは新人さんかな?」