Mezumona Kosaki pages.
実際のところ、時間はただ一方向に増えていくだけの数値ではないんだ。 君たちの言葉で言えば、時間は三次元であり目にしている世界は小さな粒として時間空間の中を漂っている。 その漂う粒が動き続けるから君たちの感じる「時間」は一方向に流れていくようにみえるんだ。 点のような粒が動き続けて線を描くから「世界線」って言う人も居るよね。
時間という名の「空間」の中で、粒で発生したすべてのエネルギーは波となって空間を伝わっていく。 エネルギーとは、君たちが歩くことや話すこと、呼吸することや考えること。 世界のすべてのものはエネルギーとして波になり時間空間を伝播していくんだ。 まるで静かな水面の上に佇んだ人が歩むたびに立てる波紋のようにね。
伝わった波によって、未来は作られ、過去は変化していく。 ちょっと先の未来は過ぎ去って行く現在をもとに作られていくし、 通り過ぎてしまったから君たちは見えないけれども、過去も常に変化しているんだ。
時には、ある世界が生み出した波が他の世界に影響することもある。 そういう時はお互いを取り込んだり、激しく衝突したりする。 でもそこに善悪は無く、ただの事象が起きたに過ぎないんだ。
僕はそんな空間の中を見つめ、好奇心の向くままに粒の中に入ってみることもあるんだ。 なるべくありのままの姿を見ていたいから、大きな干渉はしないようにしているけれどもね。
気ままな旅を続ける中、たくさんの世界の粒のうちの一つに僕は興味を持ったんだ。
その世界では、性別の概念のない四種類の「音の妖精」たちが居るんだ。 君たちの世界ではそれらの四妖精は、黄色のうさぎ、緑のオオカミ、紫のダチョウ、赤のドラゴン に見えるかな。でも、別の世界では違う形で見えるかもしれないね。
妖精さんたちはいつもそれぞれが好きな曲を奏でていたんだ。 うさぎさんはポップでなんだか陽気になれる曲。 オオカミさんはスタイリッシュで異世界を思わせる曲。 ダチョウさんはエレガントで優雅さを持つ曲。 ドラゴンさんはヒートアップしそうな力強い曲。
でも、なにかちょっと物足りない気がしたの。 それぞれの曲は光るものが会ったけれども、お互いに協力することはなく、 ただ音が流れているだけのようにみえたんだ。
なにかまとめる存在があれば、もっとこの世界は良くなりそう。 良くしてあげれば、もっとたくさんの曲が奏でられそうだと思ったんだ。
ちょっとおせっかいかもしれないけれども、干渉してみたくなった。 この世界に対して。新しいなにかを。そうだね「時楽士」とかどうだろう。
とりあえず、その時楽士が居れば妖精たちはまとまりそう。
僕の隣に居る相方に、この新しい概念を入れ込むのはどうか訊いてみた。 相方は特に何も言わずにその世界を興味なさそうに見ていた。 どうやら干渉する気は特に無いらしいみたい。
でも無関心な相方を引っ張って、無理やり入り込もうとしてみた。 一人で干渉するより、二人で鑑賞したほうがおもしろそうだったから。
乗り気じゃなかった相方も、生姜なさそうに入ることにした。 君なら何をしでかしてもおかしくないってね。 そんなに僕は変な事をいつもしていたのだろうか。
とりあえず、僕たちはこの世界に干渉し始めた。